モチベーション理論

人間の主要な欲求

教育手法や心理学の法則など世の中が溢れていますが、似た内容のもの多いです。一定のルールで説明できるのではないかと考え、マズローの欲求5段階説アルダーファのERG理論をベースに様々な教育手法や心理学的効果について考えてみました。

生存欲求、低次の外的欲求(動物的な欲求)

苦痛を避けようとする動物的な欲求をいかに充足しても、人間は不満足感が減少するだけで積極的な満足感を増加させることはありません。(アンダーマイニング効果)

外発的動機付け(効果大、持続小)
1〜4の欲求に対し有効(エンハンシング効果)です。以下のどれがで部分強化していきます。
利益(アメ)で正の強化(報酬の増)か負の強化(罰の減)
恐怖(ムチ)で正の罰(罰の増)か負の罰(報酬の減)

1.生理的欲求

食欲、性欲、睡眠欲など本能的な基本的欲求、物欲や金銭欲も含みます。
モチベーション理論
充足達成度:85%
主な自己防衛機制:昇華・合理化
主な教育手法:金銭などの外的報酬・外的報酬の減、罰金
主な心理学効果:オペラント条件付け、損失回避の法則

・物で釣る(外発的動機付け)のは強い欲求なので一見効果的ですが、積極的な満足感(モチベーション)を増加させることはありません。「4.承認欲求」と組み合わせるようにすると学習効果が高まるでしょう。
・何かを与える場合、平等に与える。全員に与えられないなら与えない方が良いというのは、この欲求からでしょう。得られるはずだったものが得られないと、強い負満足感(生理的欲求)が生じます。

2.安全欲求

安全・安心、生理的欲求を安定させる状態を望む欲求。
モチベーション理論

充足達成度:70%
主な自己防衛機制:抑圧、逃避
主な教育手法:体罰、いじめ撲滅、強い叱責
主な心理学効果:割れ窓理論(罰の恐れがない)、吊り橋効果

・体罰が効果があると感じる人がいるのはその欲求の強さ故です。しかし、上述の通り不満足感が減少するだけで積極的な満足感(モチベーション)を増加させることはないため教育上不適です。
・いじめがあるのは安全欲求が満たされていない状態ですので、まず最初に解決する必要があります。

関係欲求、高次の内的欲求(人間的な欲求)

たとえ心理的に成長しようとする人間的欲求を十分に充たすことができなくても、不満足感が増加するわけではないと考えられています。

3.帰属欲求(社会的欲求)

モチベーション理論
充足達成度:50%
主な自己防衛機制:投射
主な教育手法:小集団活動、係活動、呼名、共感
主な心理学効果:相づち法、類似性の法則(バックトラッキング、ラポールトーク)、好意の返報性、社会的証明の原理、傍観者効果、マム効果

・学習指導の前に、学級作りや関係づくりにより、帰属欲求が50%以上満たされている状態にするのが大切でしょう。

4.承認欲求(尊厳欲求)

モチベーション理論
充足達成度:40%
A:賞賛(自尊心、虚栄心)
主な自己防衛機制:補償
主な教育手法:褒める(連続強化)、意見を求める(発表)、競争、権限移譲、賞状
主な心理学効果:自尊の理論、アンダードッグ効果、黒い羊効果、宣言効果、ダニング・クルーガー効果、小さな池の大きな魚効果、リンゲルマン効果

B:批判・非難しない
主な自己防衛機制:否認
主な教育手法:遠回しに注意、自分の誤りを話した後に注意、誤りを直接伝えない
主な心理学効果:イエスバッド法、セルフハンディキャップ

・人の身になる、顔を立てる、重要感を与える、期待する、敬意をはらうなどが重要なのもこの点です。
・教育の基本である「褒める」行為はこの欲求を満たすためです。これまでの欲求を満たせていれば、成長欲求の段階に進めますが、この欲求で頑張っている人も多いでしょう。

成長欲求

内発的動機付け(持続大)
一般的に内発的モチベーションの方が持続的で集中力が高く、良い結果を生みやすいと言われています。教育で目指すのはこの段階と言えるでしょう。
コンピテンス理論

5.自己実現欲求

自分の能力を引き出し創造的活動がしたいなど
充足達成度:10%
A.面白さ(好奇心)(効果:大、持続:小)
モチベーション理論
考えていたものとのギャップ(最大に高まれば「感動」に)により面白さが生じます。予想と違うものは生物が生きる上で重要ですので興味を持つのは当然でしょう。お笑いの「フリとオチ」「緊張と緩和」も同じです。

主な自己防衛機制:置き換え
主な教育手法:予想、有効な教材・教具、刺激物を減らした教室環境
主な心理学効果:アナログマーキング、カリギュラ効果、間欠強化の法則、ゲインロス効果、コントラス効果、サイレントフォーカス、初頭効果、ツァイガルニク効果、ロミオとジュリエット効果

・子どもは予測する知識や経験が少なく「ギャップ」が生まれやすいので、笑いの沸点が低いです。特に手品はこの典型で、子どもは皆大好きです。大人になるにつれて手品で不思議なことが起きることに慣れてしまい、興味を無くす人が増えていくのでしょう。

B.楽しさ(効果:中、持続:中)
モチベーション理論
人間は慣れていきますので、常に面白さ(ギャップ)を作るのは難しいと言えます。そこで大事となるのが「楽しさ」を作ることです。
主な自己防衛機制:同一視
①自己効力感・自己肯定感(有能さ)(思い込みでも可)
<達成・成功体験>
丸つけ、発問、勝利、問題解決型
イーブン・ア・ペニー・テクニック、イエス誘導法、一貫性の原理、ローボール・テクニック、多段階要求法

<代理体験>
友だちの考え(友だちができる)、映像、読書

<言語的説得(暗示)>
ピグマリオン効果、プラシーボ効果、理由付けの法則

②自己操作感(自己決定)
主な教育手法:アクティブラーニング、言語的説得(暗示)、見通し(ミニホワイトボード)
主な心理学効果:心理的リアクタンス、聞き手に回る、、アクティブラーニング、決定回避の法則(現状維持の法則・松竹梅の法則)、混乱法(ストループ効果)、親近効果、ディドロ効果、ブーメラン効果

・自身の話題だとずっと話していられたり、大人数だと話すのが楽しくなかったりするのはこの自己操作感が関係していると言えるでしょう。

C.好き(効果:小、持続:大)
主な自己防衛機制:反動形成
モチベーション理論
①尊敬・美
理想、笑顔、明朗、穏やか、誠実、素直、公平、シンメトリー効果、フォールス・コンセンサス

②愛着・貢献(感謝)
サンクコスト効果、ザイオンス効果、自己開示の法則、スノップ効果(ハード・トゥ・ゲット・テクニック)、スリーパー効果、相談の心理効果、認知的不協和の解消理論、ボッサードの法則、保有効果、ミラーリング効果、カクテルパーティ効果

・学習自体を好きになることが一番ですが、好きな人のために頑張ろうというやる気も効果としては大きいでしょう。

欲求理論

アルダーファのERG理論では、基本的には下位の欲求(生存欲求→関係欲求→成長欲求)から満たそうとするが、それが満たされなくても上位の欲求がでてくる。同時に存在しうるとされています。
生存欲求と関係欲求はある程度満たされると重要度が下がり、より上位の欲求の重要度が上がります。ただし、最上位の欲求(成長欲求)は満たされてもその重要度は減少せず逆に増加します。上位の欲求が満たされないと下位の欲求に意識が向くとのことです。また、それぞれの欲求(充足達成度)には個人差があります。(私は帰属欲求が他の人たちより低いです。)

ちなみにマズローは晩年、5段階の欲求階層の上に、さらにもう一つの段階があると発表しました。それが「自己超越」という段階。「目的の遂行・達成『だけ』を純粋に求める」という領域で、見返りも求めずエゴもなく、自我を忘れてただ目的のみに没頭し、何かの課題や使命、職業や大切な仕事に貢献している状態だといいます。美しいとされる本当の「愛」もこの段階のことを指すのではないでしょうか。

マクレランドの欲求理論から考える

「達成」は主に5.自己実現欲求
「権力」は主に4.承認欲求
「親和」は主に3.帰属欲求
「回避」は主に2.安全欲求
と主要な欲求に該当すると言えるでしょう。

アンソニー・ロビンズによる人間のニーズ6つから考える

「安定・安心」2.安全欲求
「変化・刺激」5-1.自己実現欲求-面白さ
「自己重要感」4.承認欲求
「愛と繋がり」3.帰属欲求
「成長」5-2.自己実現欲求-楽しさ
「貢献」5-3.自己実現欲求-好き
の欲求に該当すると言えるでしょう。

心理学効果まとめ