教えて考えさせる授業

「教えて考えさせる授業」とは

教えて考えさせる授業とは、東京大学の市川伸一教授が提唱する習得型授業のオーソドックスな設計原理です。全ての授業をこの方法で行おうというものではなく、探求型(AL型)授業と両立し、相互に結びつくことを想定したものです。

市川教授によると、探求とは「学習者が自らの興味・関心に応じてテーマを設定して、それを追求すような学習」を指し、習得型と探求型では課題設定の主体が異なります。習得の授業においては、目標を設定し、課題を与えるのは教師です。探求の授業であれば、子ども自身が課題を設定することになります。「教えて考えさせる授業」は「教えずに考えさせる授業」への批判から生まれたものでもあります。

授業構成

1、教師からの説明
教師からの説明として、何らかの情報提示をします。子どもはその情報を理解して取り込む受容学習をすることになります。教材・教具、捜査活動などを工夫したわかりやすい教え方を心がけます。
教師主導で説明するにしても、子どもたちと対話したり、発言や挙手を通じて理解状態をモニターしたりする姿勢をもちます。

2、理解確認
子どもが理解できたのかを何らかの課題を通して確認します。理解度を確認するため、子ども同士の説明活動や教えあい活動を入れます。これは問題を解いているわけではありませんが、考える活動として重視します。

3、理解深化
理解確認をした上で、問題解決や討論を通じて理解を深めます。
多くの子どもが誤解していそうな問題や、教えられたことを使って考えさせる発展的な課題など、授業目標を習得するのに適した課題を教師が用意します。小グループによる協同的問題解決学習場面により、参加意思を高め、コミュニケーションを促します。

4、自己評価
振り返りの活動です。授業でわかったことや、まだよくわからないことを記述させたり、質問カードによって疑問を提出することを促します。子どものメタ認知を促すとともに、教師が授業をどう展開していくのに活用します。

教えて考えさせる授業
(東京大学大学院教育学研究科 市川研究室HPより引用)
練習問題をたくさん解かせる場合は、練習問題の前に深化問題を設定し、その後反復練習に取り組ませるのが主流になりつつあるようです。

「教えて考えさせる授業」の段階とレベル

段階レベル:必ず考慮して欲しいこと
方針レベル:教師が学習活動をどのように考えるか
教材・教示・課題レベル:具体的な方法
教えて考えさせる授業教えて考えさせる授業
東京大学大学院教育学研究科 市川研究室HPより引用)

授業づくりのポイント

  • 困難度査定

難しいところにこそ、時間と工夫が重要です。指導書、教育書などの解説を利用し、自らの学習経験や指導経験から「子どものつもりになって」というイマジネーションします。

  • 教える場面の工夫

コンパクトに重要な点を教えます。ただし、単なる要約でなく、教材や教え方を工夫する必要があります。

  • 理解深化課題の工夫

教科書の発展問題、教育雑誌などの活用し、課題のレパートリーを広くもちます。教師が疑問、代案を出す習慣が大切です。

メリット・デメリット

<メリット>
・教える過程を短時間で進めることが可能になる。
・子どもたちみんなが安心して問題の解決ができる。
・子どもが自らの学びを振り返ることができる授業が展開できる。
<デメリット>
・教えることが当たり前になりすぎてしまう。(教わる必要感)
・「教える」も「○○させる」も、子ども主体の考え方からは批判が多い。

導入の見極めのためのフィルター

長崎県では、「教えて考えさせる授業」を導入する際に、本時を「教えて考えさせる授業」にするのか、「問題解決的な学習」にするのか、見極めるためのフィルターを作った学校がいくつかあるようです。市川教授の著書によると、小学校算数科において問題解決型授業か、教えて考えさせる授業かの「見極めのフィルター」の質問項目は以下のような問いになります。

・半数以上が自力解決をできそうか?
・単元の中で学んだことを活用できそうか?
・多様な考え、方法が生まれそうか?
・計算の仕方を重ねて練習する必要がないか?
・図、表、グラフのかき方、使い方の定着を図る必要がないか?
・終末にレベルの高い問題がないか?

つまづいている子どもが多い場合、個別指導に時間がかかってしまうので、「教えて考えさせる授業」が適しているといいます。

まとめ

日本では、新学習指導要領で主体的・対話的で深い学びが掲げられ、どの学校も問題解決的な学習に力を入れていくことにシフトしていると思います。条件が整っている場合には、「問題解決型」や「自力解決型」などの主体的・対話的で深い学びの授業は素晴らしいものになるでしょう。ただ、途上国のように学力差が大きく、基礎・基本ができていない場合も多い場合は、今回紹介したような、教える場面と考えさせる場面を意識し授業を組み立てていくことは有効だと思えます。どの授業スタイルを取ろうと、大切なことは、基礎的・基本的内容を確実に習得させ、学んだことを活用させることによって、学力の確かな定着を目指す授業を実践していくことでしょう。

参考文献:
「教えて考えさせる授業」の挑戦(明治図書 市川伸一編著)
「教えて考えさせる授業」の趣旨と動向