途上国におけるアクティブラーニング

グアテマラの伝統的授業事例

私たちグアテマラ小学校教育隊員に求められている主な仕事は教師の算数授業力向上のための研修会である。任地のパイロット校の授業観察からも以下のような様子が見られる。

講義&ノートチェック型
教科書や参考書の記述内容、または練習問題をひたすら板書し、児童生徒にノートに写すよう指示する。「できた人はノートを持ってきなさい」と言って、教員自身は終始教員卓から動かず授業を行う。間違えていた場合は「No!」と言って正しく書き直させる。特に高学年に多く見られる。

1児童1問1答型
本時の内容に全く関係ない歌や踊り、遊びなどに時間を割いたあと、問題を一問だけ提示する。板書の場合は白板の中央に大きく問題を提示する。できる児童生徒(たいてい一人か二人)が口頭、もしくは前に出てきて解答し、次の問題に移る。前問題が板書提示の場合は、それを消して新しい問題を また中央に大きく提示する。間違えた場合は、「No!」と言って正しく書き直させる。 他の児童生徒はそれをみているか、違うことをしている。特に低学年に多く見られる。(先輩隊員報告書記述より)

任地の現状把握結果

授業をやってみせる

■実践
上記事例に加え、現地教員が行う授業は指導内容が間違っていたり、学習範囲を終えていなかったり、多くの問題があるので、現地教員に私の授業の仕方を見てもらうこととした。教科書に沿って指導し、机間指導など個別サポートを行えば、元が低いので単元テストの結果は劇的に向上すると仮説を立て、ひと単元丸々もらって授業を行うことした。

しかし、1週間クラスを持ち指導した結果は、テストの結果は思ったほど伸びなかった。カンニングや無回答率は減ったが、学習内容が定着しているとは程遠かった。

■考察
・授業において、理解力の低い児童はどうしても最初は写す形になってしまう。
・基礎問題の後に適用問題を行うが、反復する時間が十分に取れなかった。
・担任ではないため宿題でも多くサポートできず、間違えて覚えている児童を拾いきれなかった。

基礎問題から全児童が考え、分からない点や間違った点に気づけるようにするための次の施策として考えたのが、新学習指導要領においてもクローズアップされた「アクティブラーニング」である。

アクティブラーニングとは

教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称。学修者が能動的に学修することによって、認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る。発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習等が含まれるが、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク等も有効なアクティブラーニングの方法である。(平成24年8月28日 中央教育審議会 「用語集」より)

日本の算数の授業展開は問題解決型であり、児童の話し合い活動が取り入れられている。充分な知識や技能がない状態で、問題解決の過程を踏まえた学習はほとんど意味をなさない。グアテマラの児童の学力からすると当初は難しいと考えたが、授業の一部にアクティブラーニングの手法を取り入れてみようと考えた。
授業展開
アクティブラーニング型授業(葛飾区教委資料)

グアテマラでの実践

課題明示→個人思考→集団思考
協同学習の基本である
「シンク・ペア・シェア」、「ピアインストラクション」、「誤答訂正」あたりを混ぜて実践。
1.課題明示
クラス全体に話し合いの課題を与える。
2.個人思考
与えられた課題について考える。
3.集団思考
2〜4名のグループで検討し、答えと説明を考える。

途上国におけるアクティブラーニング

アクティブラーニングを行うには、児童に基礎が定着していない場合が多い。理論が難しく、理解している児童がほとんどいない場合だと、話し合いをしても深まりはなかった。しかし、半分くらいの児童がわかるような難易度設定をすれば(理想形にはまだ遠いが)グループ活動ができた。アクティブラーニングに向いている単元と教え込んでしまった方が良い単元はありそうである。

理解に既習事項がしっかり身についていないと応用・理解できない単元については児童だけだと苦戦する。アクティブラーニングに必要な基礎知識が半分以上の児童に身についている状態にするために事前の指導が大事である。単元のうち、全ての授業でアクティブラーニングにするのではなく、知識伝達型授業を行う場面も決めておくのも有効であろう。

本時のまとめは児童から出た言葉を拾ってまとめる。(児童に考えさせたいところだが現状は教師がまとめている)児童の反応として想定していなかったが、問題を解く上で気をつけないといけないことが児童から出てくることもあり、面白い。

反転授業の2つのパターン(完全習得学習型と高次能力学習型)のうち完全習得型学習を目指して、教科書を利用しての反転授業(予習)を取り組んでみたが、読解力の低いグアテマラの児童には効果は薄かった。色々な指導方法を試していきたい。今後は他地域の波及効果も考え、授業動画の作成も準備していきたい。

まとめ

・グアテマラの授業は知識伝達型授業。間違えを教えるなど課題が多い。
・ボランティアが知識伝達型で教えても反復学習の時間が足りず、テストの成績は思ったほど伸びなかった
・グアテマラでアクティブラーニング型授業を導入してみると、向いている単元とそうでない単元があった。
・アクティブラーニングでは問題の難易度設定(理解できる児童の割合)が重要。

主体的・対話的で深い学び(アクティブラーニング)
アクティブラーニングの基本技法