グアテマラ教育事情

教員の基礎的、基本的な学力はどれくらいなのか

基礎的、基本的な学力が一概にどれくらいかと正確には述べることは難しいです。しかし、教員のレベルは低く、試験を行っても得点が非常に低い現状にあります。主な原因としては、小学校教員が中等教育課程(日本でいうところの高校)で養成されていることや、教員の給料が低いこと、教職は魅力的な職業でないこともあるとされています。多くの小学校教員が小学生児童を教えるのには準備不足のまま教員養成校を卒業している現状があります。モチベーションがなく、教える内容を正しく理解できていない教員が教育をすることが授業の質を下げ、学習のレベルを低くし、結果、小学校・中学校での高い留年率や中退率をもたらしているとされます。

グアテマラでは、初等教育(小学校)は7歳から14歳までの子どもを対象とした義務教育です。初等教育は6年間で、前期と後期の3年間ずつの2つのサイクルからなっています。初等教育の2つのサイクルを修了すると、卒業証書が授与されます。

中等教育は、3年間の基礎サイクル(中学校)と2年または3年間の多岐サイクル(高校:一般・職業教育)からなっています。基礎サイクルを修了すると修了書が授与され、多岐サイクルを修了すると専門的な職につき、あるいは大学に入学することができる資格が与えられます。中等教育基礎サイクルは、義務教育です。教員養成は、この多岐サイクル(教員養成校3年間)で行われています。正確には、多岐サイクルで今までは行われていました。

しかし、2016年来年から教員養成のシステムが変わります。今までは中等教育多岐サイクルである教員養成校3年間で教員養成をしていたものが、教員養成校で2年間学び修了した後、大学での高等教育レベルで3年間の教員養成専門教育を受けることになりました。つまり、今までの教員養成校3年間から、教員養成校(後期中等教育)2年のちに大学でのより専門的な教員養成課程3年間を合わせた合計5年間の教育課程を経なくてはならなくなったのです。

グアテマラで現在活動する小学校教諭ボランティアは、現職教員の専門性を強化し、スキルを向上させるために、各地の教育事務所に配属され、公立小学校の活動校で授業観察を行い先生方に適切な助言を与えたり、研修会や、授業研究の導入を各学校で行ったりしています。

教員の待遇(給与、社会的地位)について

2010年に発表された情報によると、小学校と幼稚園の教員の初任給(月給)は2,480ケツァール(1ケツァール≒12~14円)です。2011年の雇用・賃金調査によれば、全国の労働者の平均賃金は1,967ケツァールで、公務員は3,387ケツァールでした。このことからも、教員の給与はけっして高くはありません。小学校教員の82%が高校レベルの教員養成校出身で、大卒以上は18%です。教員の給与は、等級に応じてスライド式に加算されていきます。等級は全部でA~Fの6段階あり、Fが最高です。これは、4年勤続することに等級が上がっていくようで(つまり、等級Fになるためには24年以上働く必要がある)、例えば、初任の4年間のA等級がQ2,400だとすると、F等級は最大でQ5,000ぐらいにまではなるようです。しかし、多くの教員が教員の給与だけでは、家庭を養ったり、生計を立てたりすることができず、教員によっては午前と午後で違う学校で働いているケースも多く見られます。グアテマラの学校は、午前部(7:30-12:30)、午後部(13:00-18:00)、夜間部(19:00-23:00)のシフト制になっていて、例えば午前中に公立小学校で働いて、午後には私立校で教える。そんな働き方をしている教員が多くいます。午後に教育分野とは全く違った仕事をもつ先生たちもいます。職業を掛け持つことに関して、日本のように法律的な縛りはありません。

子どもの教育に対して、保護者はどう思っているのか

小学校における児童の就学率は、男女ともに年々上昇していて、2010年の純就学率は95.18%とほぼ完全就学に近づいています。中学校も、就学率は年々上昇してはいるのですが、純就学率42.95%と完全就学にはまだほど遠く、中学校の就学率を上昇させることが課題です。しかし、これらのデータからわかるように小学校は完全就学に近づいていて、特に一昔前であれば、女の子は学校に行かず、家で家事を手伝っていればよいという文化があったのが、今は男子との就学率の差もほとんどなく、この10年のデータで見ても、2001年の女子純就学率が82%だったのが、2010年には95%にまで上がっており(ちなみに男子は89%→96%)、男女の教育機会均等という観点からも随分見直されたと思います。このことからも、保護者の子弟に対する教育への関心は高まっており、子どもたちが小学校に行くのは当たり前、将来仕事や家庭をもち生計を立てていくためには必要なものという意識が一般化されているように感じます。

しかし、グアテマラは都市部と地方部で格差が大きいことも問題です。グアテマラには、マヤ系をはじめとする先住民族が全人口の48.6%住んでいます。比較的に、非先住民(スペイン系や混血のメスティーソ)は都市部に多く、先住民は農村などの地方部に多く住んでいます。ですので、地域間の格差は、非先住民・先住民の格差ということもできます。たとえば、地方部では、小学校1年生であるのに、8歳や9歳、10歳の子どもたちが教室にいることが多々見られます(通常は、小学校1年生の該当年齢は7歳です)。これは、先住民地区などでは、7歳では身長も低く、精神的発達も遅れていることから、もう少し大きくなってから学校に通わせたいと考える親も多いということです。さらに、農村部によっては、スペイン語よりも、現地語(キチェ語、マム語、カクチケル語など)の方が多く話されているところもいまだ多くあります。そういったところでは、例えば家族間でキチェ語だけ話していると、子どもはスペイン語が話せず(または聞き取れず)、小学校の授業は基本的には大部分がスペイン語で行うため(国定教科書もスペイン語です)、スペイン語での授業内容がほとんど理解できず、子どもたちは学習に支障をきたします。6~7歳児段階では、まだスペイン語の修得が不十分なため、8~9歳になるまで小学校入学を待たせるといったことも一つの要因も考えられます。また、地方部に置いては就学前教育である幼稚園の普及も遅れていることが、年齢超過児童を多く生み出している原因とも考えられています。学力の格差(地方部は都市部に比べてテスト得点が低いことも報告されています)、中退率や留年率も、地域間で格差があります。やはり、都市部には非先住民をはじめとする教育意識の高い親が多く、より教育にお金をかけたり、子どもを私立の学校に通わせたりしているからだと思われます。非先住民と先住民では、所得にも格差があり、それが子どもの学力の差にも反映しているものと思われます。現在、グアテマラで活動する小学校教諭ボランティアのうち複数名は、地方部の先住民族の子どもたちが通う公立小学校で活動しています。

教育の必要性について、子どもと教員はそれぞれどう思っているのか

教育の必要性について、もちろん個人差はあると思いますが、少なくともボランティアたちが活動するどの小学校においても、子どもたちは意欲的に学び、学校生活を楽しく送っているように思います。算数が好きな子どもたちも多く、毎日目を輝かせながら、机に前のめりになって、先生に問いかけられた質問や課題に対して一生懸命に答えようとする姿も見られます。その辺りは、日本もグアテマラも変わらないのかもしれません。むしろ、地方部や農村部に行けば行くほど、子どもたちは純朴・純粋であるようにも感じます。しかし、残念ながら、そこに教員の質がおいついていないことが現状かもしれません。教員の質・能力は、そのまま児童の学力に直結しています。もちろん、教育的な設備の問題もあります。地方部では算数の国定教科書であるGUATEMÁTICAが学校に行きとどいておらず、子どもたちが教科書を持っていなかったり、学校によっては児童数に対し教員数が足りないため、一人の先生が複数の学級を教える複式学級のシステムを取っているところもあります。もちろん、大半の先生たちはそんな状況の中でも、子どもたちの学力を上げようと日々一生懸命頑張っています。しかし、現実として研修やストライキ、給与の受け取りに都市部まで出向く、家庭の都合など様々な理由で教員が学校を欠席し、授業を行わないような実態も指摘されています。これには、前述した給与が少ない、教員の職業が魅力的ではないといった理由もあると思われます。

しかし、異国から来た流暢ではないスペイン語であれやこれや言うボランティアたちの言葉に真摯に耳を傾け、自分たちの指導力・知識を向上させるために、もっとボランティアたちから学びたいと前向きな意欲を見せる先生たちがたくさんいます。

グアテマラの教育は、今までどちらかというと、先生が子どもたちにただ知識を教え込ませる一方的な教育方法が取られてきました。しかし、GUATEMÁTICAを用いて、先生たちが子どもたちに問題解決を促し、子どもたちが自ら学び、自ら考える児童中心の授業づくりができるようにボランティアたちは日々試行錯誤しながら活動に取り組んでいます。日々の授業観察、様々な研修会、先生たちが共に学び合う授業研究の導入、それらの活動を通して、そういった機運がボランティアたちの足元から徐々にグアテマラの先生たちに広がり始めています。

〜任国事情資料より〜
「基礎教育セクター情報収集・確認調査、国別基礎教育セクター分析報告書-グアテマラ-」

指定授業日数180日に満たない実態