「となりのトトロ」の都市伝説

生活

となりのトトロの都市伝説とは

「となりのトトロ」の物語の舞台は、1950年代の埼玉県所沢市周辺。家の近くには雑木林や水田が広がっていた時代です。私もこの舞台となる地域の出身のため、当時の中学校の先生が地主で「トトロの森」を寄付したと言っていたのも記憶にあります。

「となりのトトロ」の都市伝説

さて、本作は昔懐かしい山奥の田舎で、幼い姉妹が体験する不思議な出来事を描いた作品ですが、いくつもの都市伝説が噂されています。今回はその都市伝説について確認していきます。

都市伝説① サツキとメイは死んでいる

映画後半になるとサツキとメイの影が急に消えてしまうの。これは2人が死んで幽霊になったためではないか。

これについて、スタジオジブリの2007年5月公式ブログで、「みなさん、ご心配なく。トトロが死神だとか、メイちゃんは死んでるという事実や設定は、『となりのトトロ』には全くありませんよ。『映画の最後の方でサツキとメイに影がない』のは、作画上で不要と判断して略しているだけなんです。みなさん、噂を信じないで欲しいです。」と広報部が否定しています。

スタジオジブリ公式ブログ(2007年5月)

本作の美術監督である男鹿和雄氏は、「となりのトトロ」において特に背景描写で影を用いて時間の経過を表すことにこだわりました。サツキとメイの影がないのは、彼女たちが太陽の真下にいる正午の時だったからです。影が長めに出ているときは、日が落ちて影が伸びている様子を描いています。夕方差し込んでくる西日の強さも、色合いで表現していたそうです。

サツキやメイは死んでいない。影が描かれていないのは、影の長さや色合いなどで時間を表現するという、細部までこだわった演出のため。

都市伝説②:サツキとメイはもともと1人の女の子?

劇場公開時の『となりのトトロ』のポスターを見ると、サツキでもメイでもない1人の女の子の姿がいるけど誰?

隣にはちゃんとトトロがいますが、女の子は1人で傘をさし、手にもう1本の傘を持ってバス停の前に立っています。いったいこの少女は誰なのでしょうか。

「となりのトトロ」の都市伝説
(Amazon HPより)

宮崎駿監督は、作品を制作する前にイメージボードを作ることで有名です。その初期のイメージでは主人公の女の子は1人で、サツキがトトロに出会って傘を貸すことから始まる物語だったと言われています。しかし最初にトトロに出会うのは、物怖じしない少女の方がいいと考え、メイという妹が誕生。正反対の性格を持った姉妹が登場する物語に変わっていったようです。

元々一人の5歳の女の子。映画の都合上12歳と4歳の二人姉妹に変更された。

都市伝説③:トトロは死神?

トトロは死神(冥界の使者)であり、トトロに出会った人は死が近い(既に死んでいる)

最初にトトロを見たメイは行方不明になり、その後トトロを見たサツキも、あの世とこの世を結ぶ「猫バス」によって冥界へと連れて行かれてしまう。サツキが猫バスについて話した、「みんなには見えないんだ」という台詞は、猫バスが実体のない虚無の存在であることを表しているのだという。

「となりのトトロ」の都市伝説

北欧で伝承されている森の妖精「トロール」をモチーフにしたという裏設定や、小さな子供をさらう死神というトロールの伝説から、「トトロに会うと死ぬ」という都市伝説もあります。しかし、「The art of Totoro」の宮崎駿監督による説明によると、トトロは精霊などではなく動物とされています。「トトロ」という呼び名は伝承などに由来するものではなく、メイに名前を聞かれた時、うわのそらで眠たげに「ドゥオ、ドゥオ、ヴォロー」(まだ眠たいよー)という野太い声を上げ、これを返事と解釈したメイが「トトロって言うのね」と思い込んだことによります。(私は「トコロ(所沢の所)」と言っていると思っています。)
art-Totoro-ジ・アート・シリーズ
トトロの原型は、宮沢賢治の「どんぐりと山猫」のぼう然と立っている山猫の足元でどんぐりが叫んでいるシーン。これが宮崎監督のインスピレーションの源になったと言われています。
初期設定では、「むかし、トトロ族と人間の間で戦いがあり、トトロ族は戦いに敗れて姿を消したが時々姿を現していたので、お化けとかもののけとか言い伝えられてきた。ある時、トトロ族の子孫が所沢に現れた。」、名前は「ミミンズク」とされています。
また、「もののけ姫」には、森の精霊「コダマ(木霊)」が登場しますが、コダマに耳が生えて進化したのが「トトロ」だと、宮崎駿監督は言っています。日本には人が踏み入れない森がまだまだあり、そこにはコダマから進化したトトロが隠れているのかもしれません。

トトロは森の精霊「コダマ(木霊)」が進化した動物。子どもだけに見える設定などに前述の説が加わり、憶測が発展して死神という説となった。

都市伝説④:サツキとメイは両親には見えない?

病院で母親が「今、あの木のところでサツキとメイが笑ったような気がした」のは、二人が死んでいて母親にも死期が近づいているから。そして、父親が「案外そうかもしれないね」と言ったのは父親は二人が死んだことを知っているから。

サツキとメイは本作のラストで、トトロとともに病床の母親を訪れますが、トウモロコシを置いて母親に会わずに帰ってしまいます。あれだけ母親に会いたくて行ったのに、会わずに帰るのは不自然ですね。これはこの時点で、姉妹が死んでしまっており、母親には見えなくなっていたため、ということを示唆しているといわれています。

また、エンディングでは登場人物たちのその後が描かれていますが、よく見るとお父さんとお母さんが若返っていると噂されています。そのためこれはサツキとメイ、そしてお母さんが死んでしまった後でのお父さんの回想シーンだと予想されているのです。

しかし、サツキとメイが着ている服にトトロの刺繍が施されていることや、背景に枯葉が舞っている(=秋)ということから、ちゃんと物語の時系列通りに進んでいることがわかります。そのためエンディングは、2人の生前回想シーンというわけではなさそうです。

「となりのトトロ」の都市伝説

病床のお母さんに直接会わずに帰ったのは確かに不思議かもしれません。しかしネコバスに乗って病院まで行った2人は母の元気そうな姿を見て安心し、「きっとまた帰ってくる」と思うことができたので、トウモロコシを置いて帰ったのだと考えられます。これを、甘えん坊だった2人が少し大人に成長した場面だと捉える人も多いようです。

また「メイとサツキが笑っていたような気がしたの」とお母さんが言ったときには、もう2人はネコバスに乗っていたと考えられます。よって母に2人の姿が見えていなかったという説も否定できそうです。

エンディングで母親と登場人物のその後が描かれていて全員健在。甘えん坊だった2人がちょっぴり大人に成長したお話。

都市伝説⑤:「狭山事件」という実際の誘拐事件がモチーフ?

『となりのトトロ』のストーリー設定と、1963年に埼玉県狭山市で起こった誘拐事件「狭山事件」には、共通する部分がある。

・『となりのトトロ』の舞台は埼玉県所沢市で、事件があった狭山市に隣接している。
・事件後に、行方不明になった妹のことを捜索する姉の姿が目撃されている。
・サツキ(皐月)とメイ(May)はどちらも5月を表す名前で、狭山事件が起こったのも5月。
などなど。

「となりのトトロ」の都市伝説

私は狭山市出身なので、この狭山事件については子供の頃に聞かされていました。実際に起きた狭山事件の被害者は、サツキとメイのような子どもではなく、16歳と23歳の姉妹でした。また狭山事件において、姉が妹を探していたという事実はありません。
また、上述のように、製作当初は主人公は女の子1人の予定でした。姉妹にしたのは「2人いれば上映時間を延ばせるだろう」「5歳の女の子が傘を持ちお父さんを迎えに行くことはないのでは、ということになりました。しかし、5歳の女の子とトトロの出会いも描きたかったので、女の子を二人登場させるという宮崎駿監督の考えから、同一人物をサツキ(皐月)とメイ(May)の二人に分けたようです。

事件との関連性は無し。姉妹の話になったのは後付け。

まとめ

都市伝説というだけ、多くが憶測から生まれた後付けの噂です。ただ、その都市伝説を考えることでも深く作品を味わうことができます。三世代で楽しむことができる日本の名作、子供の頃に感じた気持ちを思い出しながら、もう一度純粋な気持ちで楽しんで見てはいかがでしょうか。