研究ノート・レポート

実験ノート

実験ノートは、あなたがその実験を実際に行ったことを証明する唯一の物的証拠です。
また、あなたが実験レポートを書くときに用いる唯一の情報源です。
実験ノートさえ見れば、やった実験のことが全てわかる記録です。
・年月日、天候、気温、湿度、気圧、パートナーの氏名を記入します。
・「何をどうやったらどうなった」を時系列で記入します。時刻も記入しておくと良いです。
・観察記録を具体的に。(「色が変わった」は×、「青に変化」はOK)
・測定値(何mg?何%?何℃?)
・最初に記入する(美しく書く必要なし。見栄えを気にせず積極的に何でも書き込んでいく)
・消すことのできない筆記用具で書く。消しゴムや修正機はNG(改ざん行為)
・下書きしてから清書はNG(データねつ造を疑われる)
・やることリスト+結果記入表を作っておくと便利(予習)
・普遍的な事実は現在形で記述し、行ったこと(実験操作、計算、考察)は過去形や完了形で記述する。
・実験で行う操作・手順を確認して、あらかじめ実験ノートにまとめておく。
・実験後に行うデータ解析や結果の評価の方法をあらかじめ調べておく。
(予習の厚さで、実際の実験操作・レポートのレベルが格段に変わります)

実験レポート

実験レポートは、実験の最終ステップであり、「実験やりました!」宣言です。

1. 目的   何のためにやったのか
実験テキストに書かれている内容を要約
2. 原理   どのような原理に基づく実験だったのか
実験テストに書かれている内容を要約+実験書・教科書などを参考にして内容を充実させる
3. 実験方法 どのような操作をどのように行ったのか
実験に行った実験操作をできるだけ詳細に記述(過去形・完了形で記述)
4. 実験結果 どのような結果が得られたのか
測定データ、観察結果の具体的な情報(解釈・推測を入れない)
計算間違いや単位間違いを防ぐためにも単位を省略しない(数値+半角スペース+単位)
5. 考察   そこからあなたは何を考えたのか
その結果から何が言えるのか、あなたの考えを述べるところです。
感想、反省、決意、質問は考察ではありません。
<定番は、理論値との差異を論じる。>
理論にに合っているならば、成功の理由を論じる。
(例)この実験操作においては、振動や容器内の汚れが実験結果に影響する可能性が考えられた。そこで、実験開始時に実験器具を十分に洗浄しておくとともに、測定中に容器が動かないよう、容器は手で支えずにスタンドを用いて固定した。その結果、理論値の93 %という値がえら得た。このことから、器具の清浄度や容器の保持が実験結果に影響することがわかった。(結論)

理論値に合っていないならば、「装置や手法の限界・制約」や「ミス・ハプニング」について考える。
装置や手法起因ならば「その条件下では妥当な結果である」と論じたり、実験の発展案の提案を行ったりする。
(例)理論値の67 %という値が得られた。理論値に到達しなかった理由の一つとして、サンプル回収操作が困難なものであったことが挙げられる。容器内部の壁面に付着したサンプルを薬サジで回収する操作は困難であり、反応後の試料の2割程度のサンプルを残したまま、次の操作に進まなければならなかった。ここでサンプルを十分に回収できていれば、理論値の9割近くの結果が得られていただろう。

ミス・ハプニング起因ならば、「その点を除いては妥当な結果である」と論じる。
(例)理論値の35 %という値が得られた。理論値に対して低い値にとどまっている理由として、以下の3点が考えられる。第一に、器具の洗浄が不十分であった点である。今回の実験においては、器具を前もって洗浄することなく実験を始めた。しかし、この実験操作は、容器内の汚れが実験けっかに影響するものであるため、十分な洗浄を行った後に操作を行なっていれば、収率が向上した可能性が考えられる。
6. 参考文献 あなた一人で考えたわけではないでしょう?
どこに記されている情報なのかを明記する。
どこから得られた情報なのか?
明記→引用→正当な行為
明記しない→剽窃→不正行為(処罰の対象)
参考文献は、それを見た第三者が、その情報源にたどりつける書き方を行う。
著者名、章名・論文名、書籍名、出版社名、出版年
7. 課題 

レポートを書き上げたら最終チェック。
・指定された項目は全て記されているか?(テキストをチェック)
・図表番号に重複・欠落はないか?(一つずつ参照)
・図表番号と本文とは対応しているか?(一つずつ参照)
・単位に誤りはないか?(一つずつ参照、検算)
・計算間違いをしていないか?(検算)

本ページの記述は、北里大学理学部 野島高彦先生、千葉大学理学部 沼子千弥先生のレクチャー資料を基に作成しました。
[1] 野島 高彦: はじめて学ぶ化学,化学同人,2012.
[2] 野島 高彦,竹中 繁織: DNA四本鎖構造を利用したカリウムイオンの検出,機能材料,Vol. 24,No. 4,pp. 5-9,2004.
[3] T. Nojima, T. Yamamoto, H. Kimura, T. Fujii: Polymerase chain reaction-based molecular logic gate coupled with cell-free transcription-translation as a reporter, Chemical Communications, No. 32, pp.3771-
3773, 2008.